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不治の病ともいわれるエイズの治療技術とは?

20世紀に発見されたエイズは、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染を原因とする各種の疾患群のことを指しています。エイズが独立した疾患でHIVが原因ウイルスであることが明らかになって以降、長らくの間不治の病として恐れられてきました。エイズが従来のいかなる感染症とも異なっていたのは、身体のそれぞれの器官や部位で繁殖して炎症などを来たすのとは根本的に違って、免疫システム自体を破壊する機能を保有している点です。免疫システムは外部から侵入してくる細菌やウイルスなどの病原体が、体内で増殖するのを抑えるために検知し排除する機能を有しています。免疫システムはTリンパ球やBリンパ球、マクロファージなどの血液中の細胞などによって機能しているのです。ところがHIVはこれらの免疫システムを構成する細胞自体に侵入し、最終的に破綻させてしまいます。その結果免疫機能が正常な状態では人間に対して病原性を発揮しない細菌に対しても、排除できないので重症化するような状況になってしまいます。また免疫システムが破綻することで、特殊な悪性腫瘍が発生するなど深刻な合併症も併発するため、昔は一度発症すれば座して死を待つほかない状況だったわけです。しかしその後は各種の抗レトロウイルス薬が複数開発されるなど治療技術の開発が進みました。現在ではさらに治療技術は洗練し、多剤併用療法を実践することでエイズの発症を防止することも可能になっています。仮にエイズを発症しても合併症に対する治療技術も進歩したため治療可能であり、寿命を全うすることは先進国に限っていえば珍しくなくなりつつあります。したがってエイズは不治の病というのは、昔の話になったといって間違いないでしょう。今後の研究者の関心は、ワクチン開発にあるといえます。先進国と異なりサハラ以南のアフリカ諸国では依然としてエイズは大きな脅威であり、平均寿命を大きく引き下げる原因になっているのです。最貧国レベルでも抜本的な対策を可能にするのが、ワクチンをおいて他にないのが現実です。日本をはじめ世界中の研究者がエイズワクチンの開発に取り組み、すでに臨床試験も開始されていますが、いまだに安全かつ効果的にHIVに対するワクチンの開発には成功していません。臨床試験がなかなか進捗しないのは、HIVの感染と防護免疫誘導のメカニズムが完全に解明されていないからだと見られています。今後はエイズワクチンの実用化が待たれるところです。